静まり返ったオフィスに、キーボードを打つ音だけが小さく響いていた。壁掛け時計はすでに23時を指している。
「高橋さん、もう遅いから帰っていいよ。」
低く落ち着いた声が彼女の背後から届く。部長の橘はスーツのネクタイを緩め、疲れを滲ませながらも鋭い視線を彼女に向けていた。
「いえ、大丈夫です。あと少しで終わりますので……。」
高橋美咲は振り向きもせず、真剣にモニターを見つめ続けた。しかし、その心臓は先ほどから早鐘を打ち続けている。橘部長と二人きりで残業する時間は、いつもどこか息苦しさと甘い緊張感に満ちていた。
橘が静かに彼女のデスクに近づく。美咲の肩越しに画面を覗き込み、その距離が彼女の耳元に息がかかるほど近かった。
「……無理しすぎるなよ。」
その瞬間、美咲は耐えきれず顔を上げた。二人の視線が重なり、時が止まったかのようだった。
「部長……」
美咲の唇が微かに震えた。橘は一瞬迷ったような表情を浮かべるが、その迷いはすぐに消え去り、彼はゆっくりと手を伸ばして美咲の頬に触れた。
「……こんな時間まで頑張る君を見ていると、抑えが効かなくなる。」
言葉は静かだったが、その声には確かな熱が宿っていた。
美咲は逃げることも、拒むこともできず、ただ橘の深い瞳に吸い込まれていく。
次の瞬間、彼の唇が彼女のそれに重なった。柔らかく、しかし確かな意思を持ったキス。美咲は目を閉じ、その瞬間にすべてを委ねた。
デスクの明かりが二人のシルエットをぼんやりと浮かび上がらせる。書類の山があるにも関わらず、二人はもう仕事のことなど考えられなくなっていた。
橘は美咲の肩に手を回し、彼女を引き寄せる。そして彼女の耳元でそっと囁く。
「ここじゃなく、別の場所へ行こうか。」
美咲は小さく頷き、橘の手を取った。
オフィスの扉が静かに閉じられ、夜の闇が二人を優しく包み込んだ。
オフィスという閉ざされた空間だからこそ生まれる緊張感と甘美な瞬間。二人の秘められた関係は、静かな夜の中でゆっくりと深まっていく。激しく熱い喘ぎ声をあげながらしがみつく姿が目に浮かぶ