菜の花が咲く楽しい田舎町。 高校2年生の結菜(ゆいな)は、いつもと同じ通学路を歩いていた。 空気は澄み、鳥のさえずりが心地よい。 春の訪れを感じながらも、彼女の心にはどこか物足りないがあった。
「毎日、同じことの繰り返しだなぁ…」
心の中でつぶやきながら歩いていると、風が吹き、目の前に何かがなんとなく落ちてきた。
「これ何?」
拾い上げて、それは小さなスケッチブックだった。 表紙には、「風景を探して」とだけ書かれている。 興味を惹かれた結菜は、そっとページをめくった。 そこには、見覚えのある町の風景が鉛筆で繊細に描かれていました。
「誰が描いたんだろう…すごく上手。」
その瞬間、後ろから声が聞こえた。
「それ、僕のスケッチブックだと思うけど…」
振り返ると、そこには同じくらいの年齢の少年が立っていた。
「ごめんなさい、落ちてたから拾っちゃったの。」
「いや、大丈夫。ありがとう。」
少年は少しばかりそうにスケッチブックを受け止めて、にっこりと笑った。その笑顔に、結菜は不思議な温かさを感じた。
次の日、結菜が通学路を歩いていると、少年があまた絵を描いているのを見つけた。 興味を抑えきれずに我慢すると、少年は気づいて顔を上げた。
「また会ったね。」
「うん、昨日はありがとう。」
名前を聞いて、少年の名前は湊(みなと)だということがわかりました。 彼は隣町の高校に通っていて、休みの日にこの町を訪れて絵を描くのが趣味だそうだ。
「絵を描くのが好きなの?」
「うん。景色を見ていると、心が穏やかになった。でも、君もこの町に住んでいるならわかるでしょ?この町には特別な魅力がある。」
結菜はその言葉にうなずいた。毎日当たり前のように見ていた景色が、湊の言葉で急に美しく思えた。
それから、結菜とミナは何度も町の見通しで会った。 ミナは結菜に、絵を描くポイントや好きな場所を教えてくれた。並木の下に座っていた。
「結菜は、将来したいの?」
湊に聞こえそうで、結菜はしばらく黙っていた。
「正直、まだ何も考えてない。ただ、こんなに気が遠くなる瞬間を大事にしたいな。」
「それいいね。」
湊はスケッチブックを開き、何かを描き始めた。結菜が目を見張ると、そこには自分の姿があった。桜を背景に、微笑む結菜が描かれている。「えっ、私?」
結菜は驚きで言葉を斬った。
「うん。この景色を見ている君が、とても素敵だと思ったから。」
湊は照れくさそうに笑いながら答えた。その笑顔に、結菜の胸がドキンと高く鳴った。こんな気持ちは初めてだった。
「ありがとう…。でも、私なんか全然特別じゃないよ。」
「そんなことはない。結菜があるだけで、この町の風景ももっと生き生きして見えたんだ。」
湊の言葉はまっすぐで、結菜の心にまるで春風のように優しく届いた。 彼の瞳を見つめると、そこに嘘や迷いは一切感じられなかった。
その日以来、二人は一緒に過ごす時間がどんどん増えていった。 ミナは結菜に絵の描き方を教え、結菜はミナに町の秘密の場所を案内した。菜にとってかけがえのないものになった。
ある日、夕焼けに染まる丘の上で湊が突然言った。
「実は、来月から遠くの美術学校に行ったんです。」
その言葉に、結菜の心はぎゅっと締められた。 湊と会えなくなるかもしれない――その事実が、彼への気持ちをより一層はっきりさせた。
「そっか…夢だもんね。応援する。」
結菜は精一杯笑顔を作りましたが、目の奥が熱くなりました。
「結菜、ありがとう。君と初めてのこと、本当に感謝してる。君が来てくれたから、僕はこの町をもっと好きになったし、勇気ももらった。」
結菜の目から一筋の涙がこぼれた。 それを見た湊は、彼女を優しく抱き締めた。
湊が美術学校へ旅立つ日、結菜は駅で彼を見た。電車が動き出す直前、湊が窓に出て言った。
「結菜、必ず戻ってきますよ。そのとき、もっと素敵な絵を君に見せてから!」
言葉に、結菜は力いっぱいうなずいた。
それから数年後、結菜が地元の小さなギャラリーに足を運んで、そこには湊の描いた絵が飾られていた。絵の中には、桜の下で微笑む結菜が描かれている。それを見た瞬間、結菜の胸はあの日のようにドキンと高鳴った。
「ミナ…また会える日を楽しみにしてるよ。」
そう心の中でつぶやきながら、結菜は春風に吹いてギャラリーを後にした。