梅雨の終わりの午後、ぽつぽつと良く降っていた雨がやっと止み、空にはうっすらと虹がかかっていた。 駅のホームに立つ咲（さくら）は、傘を閉じて湿った空気を吸い込む。より人が少ないホームで、彼女の悩みは無意識に電車が来る方向に向いていた。
「お待たせ。」
横から聞いて慣れた声がして、振り返って彼がいた。 悠斗（ゆうと）。 大学の同期で、優しい友人の一人。 いつもラフナTシャツの姿の彼が、今日は少しだけきれいめなシャツを着ているのが新鮮だった。
「遅いよ。傘持ってきて頼んだのに、雨が止んだんじゃない。」
軽くふくれっ面をすると、悠斗は決めた。
「ごめんごめん。でも、雨が止んだなら結果オーライだろ？」
そう言って咲良の横に並んで、同じ方向を眺める。
二人は大学を卒業してから半年ほど経つが、連絡を取り合い、時々こうして面会仲だった。 咲良は特に深い理由もなく、彼と過ごす時間も心地よくて好きだった。気持ちが少しずつ変わり始めているのを存在していた。
「今日はどう急に会おうなんて？」
咲良が考えずに考えてみると、悠斗は少し迷って迷った後、笑った。
「うーん、理由なんて特にないけど…最近、咲良に会いたくて思うことが多くて。」
その一言に、咲良の心臓が跳ね上がる。ふざけて言ってるのか、本気なのか。いつも通りの柔らかい表情からは読めない。
二人はついでに乗り込み、並んで座った。車内は思いのほか空いていて、他の乗客の話し声が静かに響いている。
「そういえば、咲良ってさ。」
悠斗が突然話しかけてきた。
「うん？」
「もし好きな人ができたら、自分から告白するタイプ？」
突然の質問に、咲良は目を丸くしました。
「え、どうだろう…多分、できないかな。自分からなんて、とりあえず無理。」
それではと、悠斗は何か考えるように考察を外した。
「そっか。じゃあ、相手が気付いてくれるのを待つしかないってことだな。」
自分の胸やもやを整理するだけで頑張ったからだ。
降りる駅が近づき、二人はまたホームにいました。 雨上がりの風が心地よく吹く。 悠斗が縮小深呼吸をしたのが聞こえた。
「咲良、俺、話したいことがある。」
その真剣な声色に、咲良は緊張して顔を上げた。
「何？」
「ずっと言おうか小遣いてんだけど…俺、咲良のことが好きだ。」
期待もしていなかった言葉に、咲良は動けなくなる。 悠斗は真っ直ぐな目で彼女を見つめていた。
「え…」
言葉が出ない彼女に、悠斗は続けた。
「友達として会うだけじゃ、もう物が足りない。もっと近くで、もっと咲良のことを知りたい。」
胸がぎゅっと締められる。咲良は自分の顔が赤くなるのを感じながら、小さくなずいた。
「…私も、悠斗のこと、好きだと思います。」
その答えに、悠斗の表情が柔らかく緩んだ。
虹はもう消えかけていたが、その間二人は光が差し込んでいたのだ。 雨上がりのホームで始まった恋は、これから二人の未来を鮮やかに彩っていくのだ。
